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できなかったら何が何でもやる、何かを返上してでもやるという忍耐がいまはないのかなという話をしていました。
U)社会全体の風潮なんですかね。
以前よくH先生は、「女の子を教えるときはおだてて教えなければだめだけれども、男の子をおだてたら先生のほうがバカにされるから、絶対おだててはいけない」とおっしゃっていたのですが、いまは大学生をみていてもおだてないとだめですよね。
C)父が最近よく言っていましたか、「最近の子はおだてりゃ図に乗る、怒りや泣く」(笑)。
だから技術を教えるのが難しい。
技術を習得するのも忍耐が必要ですから、合奏だったら来るけど、「今度は個人レッスンだよ」と言ったら来ないとか。
合奏の場合は、まわりが自分と同じパートを弾いていますから、弾ける気分になっちゃうんですね。
U)たしかに弾いた気になりますね。
C)でも、それである程度弾けるんだという気分にさせていかないと、技術を教えるのは難しいかもしれない。
いまの子は、私も大学のオーケストラを教えに行って、「先生、これできないんです」。
「じゃ、どういうふうに練習した?」ときくと、「何回か弾きました」「何回って何回?」、「五、六回ぐらい」なんて言います。
「指で数えるぐらいだったらだめだね。
とにかく100回弾いてみたら」と言うのですが。
私もよく父に言われたのです。
一〇〇回弾いてできなかったら二〇〇回。
でも、二〇〇回弾いてもできないのだったら、練習方法を変えるとか、何かを変えてやってみる。
でも、まず最近の子は、二、三回弾いてできなかったら「できません」とすぐに先生に聞きに行く。
聞いてわかるのかといったら、これはわからないのです。
U)いまの大学生の話を聞いているのと一緒ですよ。
まったくそのとおりです。
C)『先生、うまくなる近道って何ですか』と聞きにくる(笑)。
「うまくなる近道は、練習することじゃないの」と答えましたけど……。
あるどこかのパッセージか弾けないなら、ゆっくり弾いてみる。
でも弾けない、ではリズムを変えてみる、などいろいろと自分の独自の練習方法を考えることがいちばん大切だと思う。
もし近道なんてものがあるんだったら、全員がプロになる。
そういうことを考えている時間があるのなら練習すれば、と言うんです。
父に「そういうことを言ってくる子がいるんだよね」と言ったら、「いまの子はすぐに楽な方法、楽な方法を考えようとする。
結局それはもしかしたら勉強でも、塾なんかで全部教え込まれて、まず教えてもらってそれを暗記するというふうになっているからだろう」と言っていました。
小学生が合宿などで話していることばもすごく難しくて、『広辞苑』を引かないとわからないようなものをパッと使うんですが、「それ、どういう意味?」と聞いても、辞書どおりの答えか返ってくるだけで、「じゃそれどういう場合に使うの?」と聞くと、もう答えられない。
それで、すぐに教えてもらうのを待っている。
これとこれをこういうふうにしていらっしゃい、というのは完璧にクリアしてきても、ではそこで応用、リズムをちょっと変えてやってごらん、と言ったらまったくできないというのがある。
できないときに、「いや、僕、これ苦手なんです」と、すぐ自分の苦手にしてしまう。
U)苦手をつくるのはだめだとよく言われましたね。
C)最近、ことばで自分を決めつけてしまうというのがよくある。
U)話を聴いていると、それはいまの大学生とまったく同じですね。
C)父は「そういう子たちはひとつのものの考え方しかできないから」と言っていました。
曲をパッと弾いて、「これ覚えてらっしゃい」というと、何か何でも覚えてくるらしいのです。
でも「それ三楽章から弾いてみて」といったら、絶対弾けない。
いつも一楽章からしか弾いてないから、決まりきったことしかできない。
音階を弾いて、「それを三番目のところから弾いてみろ」というと、もうそこでパニックになってしまうらしいのです。
音階はハ長調でドから始まるのだったらドからしか弾けない。
そこからだといくらでも早くできる。
三つ目といったら、エッという感じで、柔軟性がない。
U)結局自分の頭で考えられなくなっているんですね。
そういうときはどうされるのですか。
C)そういうときは「それだとぜんぜんわかってないな」と言うと、この子たちは「わかつてない」と言われることにいちばん打撃を受けますから、今度は一つずつから練習していくんですって。
そういうことではなく、もっと柔軟性を持てということなんですけれど。
それで、とっさの判断で初めての曲、初見をやらせるとか、いろいろと課題を与えてみるようにしています。
けれども準備はいつもしてくるのですが、与えられた課題だけをやっている。
U)マニュアルどおりのことだけをやっている。
まさにいまの世の風潮ですね、変わりようかないのでしょうけれど。
そういう意味では、最近になればなるほど教え方にいろいろ工夫をしなければいけない。
大変になつてきていますね。
C)その意味でもいろいろな教材を使うことを考えたり、違う楽器の曲をあえてやってみたり、あるいは、そういう子どもは止まってしまうと次が考えられないので。
まずはまちがえても何でもいいからひとつのものを作り上げるようにしたりします。
そういう子の場合。
じっくり作り上げるときもあるけれども、とにかくたくさんの量をこれだけやりなさいとバーンと渡してしまって一度パニックにさせたり、いま弾いている曲じゃなくて前の前に終わったのを抜き打ちのように[ちょっと弾いてみて]と弾かせたり、いつも何がくるかわからないという状態にしたりするなど、いろいろ工夫しています。
U)そういう工夫は、いまの先生たちにずいぶん参考になると思います。
でも教えるほうにも実力がないと、そこかできないですね。
C)ひとつのことしか考えない子というのは、注意をすると、言ったときすぐに直るんです。
でも、また次のことを言うと前のことを忘れてしまう。
それで前に言ったことをもう一度言うと、初めてみたいにうんうんと聴いているのです。
そういうとき、その場は知らないふりをしていることもあれば、「それいつも言っているぞ」とか、「前も言ったぞ」とか言うこともあります。
U)昔、私か教わったときよく言われたのですが、たぶんこれは日本人に一般的なことなんだと思いますが、主旋律ばかり追って、支えていくことに関してすごく弱いところがあるような気がするんです。
よくおっしゃっていたのが、自分の子がセカンドバイオリンになったら、「ファーストバイオリンにしてほしい」と親が言ってくるとか、弦楽四重奏をやっているときセカンドバイオリンになったらいやだという子がいる、ということでした。
ほんとうはセカンドバイオリンがちゃんとしていなかったら、ファーストバイオリンは生きてこないんだけれど、どうしてそこかわからないのかな、なかなか伝わらないな、とおっしゃっていました。
全体を支えていって音楽を作っていくというところがすごく弱いというか、なかなか理解できないような気がします。
C)技術的、音域的にはセカンドバイオリンのほうがそれほど難しくない場合があるので、最初合奏に慣れさせるためにセカンドにする場合もあれば、メロディが多いのでファーストにしたほうがいいといってファーストにする場合もあります。
父は合奏団に対しても言っていたのですが、弾けないからセカンド・バイオリンを弾くのではない。
ぽんとうならば主旋律も全部わかっていないと下は支えられない。

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